レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「他に何か理由があるとでも思ってたの?」
眉をひそめて問う(リディア)に,デニスは「いや」と肩をすくめた。結婚してもまだジョンに妬いているなんて,かなりみっともない。
「――それにしても,あなたのタメグチはこの先もずっと変わらないんでしょうね」
「悪いかよ?」
彼女の言葉を非難と受け取ったデニスは,口を尖らせた。
「ううん。だって,わたしにも一生変わらないものがあるから」
「……え?」
「あなたへの恋心は,これからもずっと変わらないから」
そう言いながら,リディアは久しぶりにデニスの肩に頭を預ける。
「ところでリディア,とうとう初夜だけど。心の準備はできてるか?」
「ええ」
甘さもへったくれもない誘い文句に,リディアはためらいなく頷いた。
デニスはこの日まで,一月()えた。ついに二人が本当の意味で結ばれる時がきたのだ。
< 267 / 268 >

この作品をシェア

pagetop