レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「あ,デニス!ご苦労さま」
すると,彼の声がちゃんと聞こえていたリディアの方が,デニスに気づいてくれた。
「あ,ああ……。えっと,南の宿のおかみがプレナの出身なんだってさ。だから,そこに泊まることにした」
「でかした,デニス!――ではリディア様,参りましょう」
「ええ」
リディアとジョンの間の甘酸っぱい空気は相変わらずで,デニスは何だか面白くない。
「なあ,リディア。――オレが離れてる間にジョンと何かあったのか?」
嫉妬心むき出しで,デニスが問うてきた。
「え?何かって……。ステキな髪留めを買ってくれたから,嬉しかっただけよ」
変な勘繰りをしているらしい彼に,リディアは事実のみを打ち明ける。
「は?それだけで嬉しいのか?」
「嬉しいわよ。だってわたし,淋しかったんだもの。ジョンには何だか,距離を置かれているみたいに思ってたから」
そんな彼からの思いがけない贈り物。嬉しくないはずがない。
「リディア,まさかジョンのこと……」
「――え?」
「いや,何でもない。ああ,馬,預かっててくれてありがとな」
デニスの様子が何か変だ。馬の手綱を引きながら宿に向かう途中,リディアはずっと,首を傾げていたのだった――。
すると,彼の声がちゃんと聞こえていたリディアの方が,デニスに気づいてくれた。
「あ,ああ……。えっと,南の宿のおかみがプレナの出身なんだってさ。だから,そこに泊まることにした」
「でかした,デニス!――ではリディア様,参りましょう」
「ええ」
リディアとジョンの間の甘酸っぱい空気は相変わらずで,デニスは何だか面白くない。
「なあ,リディア。――オレが離れてる間にジョンと何かあったのか?」
嫉妬心むき出しで,デニスが問うてきた。
「え?何かって……。ステキな髪留めを買ってくれたから,嬉しかっただけよ」
変な勘繰りをしているらしい彼に,リディアは事実のみを打ち明ける。
「は?それだけで嬉しいのか?」
「嬉しいわよ。だってわたし,淋しかったんだもの。ジョンには何だか,距離を置かれているみたいに思ってたから」
そんな彼からの思いがけない贈り物。嬉しくないはずがない。
「リディア,まさかジョンのこと……」
「――え?」
「いや,何でもない。ああ,馬,預かっててくれてありがとな」
デニスの様子が何か変だ。馬の手綱を引きながら宿に向かう途中,リディアはずっと,首を傾げていたのだった――。