レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「お前は充分(じゅうぶん)強いから。オレが守るまでもないかな,って思っただけだよ」
「う…………」
あっけらかんと言ってのけるデニスに,図星を突かれたリディアは言葉を()まらせる。
「まあでも,仕事ならちゃんとやるよ。お前のこと,ちゃんと守ってやるからさ」
渋々(しぶしぶ),という口調(くちょう)で言うわりに,彼の表情が心なしかはにかんでいるようにリディアには見えた。
「……それはどうも。そんなことより,デニス。あなたのその横柄(おうへい)な態度,何とかならないの?わたしは皇女なのよ。せめて,敬語くらいは使ってほしいものだわ」
いくら幼なじみだからといって,自分の身分はわきまえてほしい。リディアはそう(うった)えかけるが……。
「それはムリだな。いくら皇女だからって,幼なじみに敬語なんか使えるかよ」
デニスにバッサリ()り捨てられた。せっかく親しくしていたのに,敬語で話したら壁ができてしまう。……彼の言い分も分かるのだけれど。
「でっ……,でもっっ!ジョンはちゃんとわたしのことを(うやま)ってくれてるわよ」
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