レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
リディアはもう一人の幼なじみを引き合いに出して,口を(とが)らせる。同じ幼なじみなのに,二人はどうしてこうも違うのか。
「ああ,ヤツは生真面目(キマジメ)だからな。でも,オレは違う。一緒にしないでくれ」
ジョンと比較(ひかく)されたデニスは,面白(おもしろ)くない様子。不機嫌そうにそう吐き捨てた。
「だいたい,十二歳のガキが,大人のマネして『姫様』なんて。幼なじみの顔色(うかが)うことなんかしなくていいんだっつうの。今までずっと呼び捨てだったのにさ」
「それは……,まあ……そうね」
デニスの言うことにも一理(いちり)ある。それは,ジョンが一足(ひとあし)先に大人になったからだと,リディアも何とか納得しようとしたけれど。本音(ほんね)を言えば戸惑(とまど)ったし,少し(さび)しくもある。
「姫様」と呼ばれることで,自分との間に距離を置かれたようで。……でも。
「ジョンはお父様が厳しい(かた)だから,そうなってしまったのかもしれないわね」
ジョンの父・ステファンは帝国兵で一,二位を争う手練(てだ)れで,次期将軍との呼び名も高い男だ(ちなみに争う相手はガルシアである)。
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