レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
デニスが勿体(もったい)ぶってからかってから,ジョンが自分達の主の正体を明かした。
「この方はレーセル帝国の次期皇帝,皇女リディア様だ」
「そしてオレ達は,リディア姫の護衛をしてる帝国の兵士ってわけだ,おっさんよ」
彼女が毅然(きぜん)とした態度で微笑むと,デニスもニヤリと笑う。
中央に立つリディアの両側に(ひざまず)く二人の若者,という構図を目にした頭は,やっと合点がいったようだ。
「なるほどなあ,そういうことかい」
「我が国レーセルの庇護国・プレナでのあなた方の蛮行(ばんこう)については,既に聞き(およ)んでいます。わたしはこの国の次期皇帝として,これ以上の蛮行を見過ごすわけには参りません」
リディアはジョンと同じくらいの背丈の海賊(がしら)に,敢然(かんぜん)と言い渡した。
彼女だって,本当は怖いのだ。頼もしい幼なじみ二人がついていなければ,ここから逃げ出してしまっていたかもしれない。
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