俺様専務に目をつけられました。
ブブブ、ブブブ、表示された名前は『晴香』。

「晴香!お前何処にいるんだ!」

思わず怒鳴ってしまった。電話の向こうはシーンと静かだ。何処かでまた怖くなって動けなくなっているのか。

「享くん・・・。助けて、エレベーターが止まって出れない。」

エレベーター?さっき圭吾が誰もいないと確認してきたとこだよな。うちじゃなくて違う建物なのか?

「エレベーターってどこのだ?」

「うちのに決まってるじゃないですか。」

「うちの?・・・・圭吾、さっき確認取れたって言ったよな。」

「ああ。守衛室で非常ボタンにも反応は無かった。三栗さんが中にいるのか?」

「晴香、右側のエレベーターに乗ったのか?」

「はい。」

「なんでもっと早く連絡よこさないんだ。」

何も出来ないもどかしさと心配で口調が強くなってしまう。晴香は不安の中一時間近くも一人で頑張っていただろうに。

「だって・・・、非常ボタン押しても反応ないし、電話かけても繋がらないし・・・・。電池少くなるし・・・。・・・享くんにもう一度かけて繋がらなか・・たら・・・。」

最後の方は泣き声で聞き取れなかった。

「ごめん、晴香が一番不安なのに大声出して。」

俺の横では圭吾が消防に連絡を入れていた。

「専務、エレベーターの閉じ込めが多数あって順に回っているらしいのですが、少し時間がかかりそうです。」

「分かった。・・・晴香、消防が順に救助に回っているが少し時間がかかるらしい。もう少し頑張ってくれ。」

「はい。でももう少しの間、電話繋げてていいですか?」

「いいぞ、話し相手してやる。」

暫く話をしているうちに晴香の声にも張りが出てきた。よかったと安心したが晴香のスマホの残電池数パーセントを知らすアラームが鳴った。

「晴香、いったん電話切るぞ。救助が来たら連絡入れるからな。俺は六階のエレベーターの前にずっといるから。」

「わかりました。」

プープープー 電話が切れた。
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