俺様専務に目をつけられました。
店に着き通された部屋は六人座れる机が二つ並べられていた。

「浅田君、他に誰が来んの？」

「ん？飯田と田上と及川。」

「へー、急な話やのによくそんなけ集まったなー。」

「俺ら元から一緒に飲むつもりやったし。」

じゃあ男だけで同期会しとけよ！
と心で悪態をつきながら顔は笑顔で席に着いた。
席に着き料理を注文しながら待つこと約十分、残りの三人もやって来たところで『初めての同期会、全員とはいかないけどカンパーイ！』浅田君の掛け声で同期会が始まった。

学生の頃のボランティア活動後の打ち上げに最初のノリは似ていた。彼女やその他のバカ話だったのが時間が経つにつれ仕事の真剣な話に変わってきた。ここにいるのは営業、企画、海外事業部。仕事の話になってもどこかで繋がりがあるのかちょっとした意見交換会みたいになっていた。そうなると総務の私は話について行けず蚊帳の外。ボッーっとみんなが真剣に意見を言い合う様子を見ていた。

「ごめんな、みんな仕事の話ばっかになって。」

一人、仕事の話に入れずにいる私に気が付き声をかけてくれたのは海外事業部の飯田君だった。

「えっ？あー。」

「高瀬と女子会の予定に浅田が割り込んだんやろ？」

「んー、でもまあ大勢で飲むのも久しぶりで楽しいし。」

エリート候補者は周りの様子によく気が付く。やっぱり違うなー、なんて思っていた。

「こら、飯田！同期十六人中、女子はたった五人やねんぞ。お前イケメンやねんから外で彼女探せ！」

「浅田君、酔ってる？飯田君は話についてけないない私を気にかけてくれただけ。彼女だっているやろうし失礼だよ。」

そう答えた私に対して飯田君が『彼女はいない』と言った言葉は私の耳に届かなかった。
その後はみんなも私に気を使ってくれたのか余り仕事の話をする事は無かったが、初めての同期会は盛り上がって終了した。

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