俺様専務に目をつけられました。
その日の十二時前に専務から電話がかかってきた。

「晴香、チョコとプレゼントありがと。来るなら言ってくれればいいのに。」

「早く帰れたんですか?」

「ムリかな・・。」

「でしょ?今日中に渡したかっただけなんで、行くなら享くんがゆっくり出来る時に行きます。」

「ごめん。来月もまた十日ほどヨーロッパに行くことになった。あーっ、また晴香に会えない日が続くのか。近いうちに時間作るから。圭吾にムリでも作れって言うから。」


それからお誘いの連絡が入ったのはホントに直ぐだった。たった二日後の十六日の昼過ぎ、土曜日で仕事は休みだが相変わらず予定もなくダラダラとしていたら、いつものごとくの突然のお誘いメッセージが届いた。

【夜、一緒にご飯食べよう。迎えに行く。】

母に夕飯はいらないと告げ、まだ昼過ぎだというのにお出かけの準備を始めた。
専務が迎えに来てくれたのは七時過ぎだった。約一か月振りに見る専務は少し痩せた?疲れた顔をしている。
パーキングに停められた車に乗り込むなり私を抱きしめ離さない専務。

「はー、やっと晴香に触れられた。」

確かに会社ですれ違う事もあるけど、事務的に『お疲れ様です』と挨拶をするだけ。
パーキングの車の中とは言え、家の近所で抱き合うのは・・・。専務にやんわりと断りを入れたが『ムリ』の一言で片づけられ、しまいにはキスまでされた。

どうかご近所さんに見られてませんように・・・。



夕飯は近くのファミレスで済ませ、その後はコンビニで飲み物を買って近くの公園の駐車場で十一時ころまで一緒にいた。特別何をするでもなく話をするだけ。

「享くん、何かあったら言ってね。」

「・・・・・・」

専務は何も言わず、ただ私を抱きしめた。
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