俺様専務に目をつけられました。
一人家を出て向かったのは圭吾のマンションだった。
インターホンを鳴らすと寝起きの圭吾が出て来てくれた。

「お前、今何時だと思ってんだよ。」

「悪い。話を聞いてもらいたくて。」

俺の冴えない表情から何かを感じ取った圭吾は家に招き入れたくれた。

「三栗さんは?」

そりゃ聞くよな。自分が昨日俺たちを送ってくれたんだもんな。

「家で寝てる。」

「はっ?一人置いてきたのか?黙って?・・・・・・何があったんだよ。昨日からお前変だぞ。」

昨日、社長室で親父に言われた全て、そして家に帰ってからの事を圭吾に話すと『はーっ』と盛大にため息をつかれた。

「社長もたいがいだが、お前も何してんだよ。・・・でっ、お前は自分のしてしまった事に耐えきれず別れを切り出されるのも怖くて逃げてきた・・・って事か?」

「・・・。」

「早く帰って三栗さんにちゃんと謝った方がいいと思うけど?」

「わかってる。でもその前に問題を解決しないと何も変わらない。」

圭吾と話をして俺の中で何かがふっ切れた。

「圭吾、フェアが終わったら親父ともう一度話をする。それでもダメなら会社を辞めようかと思う。今まで親父の背中を追いかけて来たけど・・・。」

「そっかー、俺はどうしようかな。お前が辞めるなら俺も辞めよっかな。お前いなかったら意味ねーしな。二人で会社作るか!」

「圭吾・・・。わるい。」

「いいよ。今回の社長のやり方、俺も納得できないし、お前と一緒にやってくために東郷にはいったんだしな。」

圭吾が実際思っている事は分からない。俺の身勝手で親友を無職にするかもしれない。でも今はこいつが傍にいてくれて、こんなに心強いものは無かった。





週かけから俺はフェアに向けての最終調整で一段と忙しくなった。その合間に爺さんにも親父が聞き入れない時は東郷を去るつもりでいる事を伝えた。

「しょうがないの。わしも一範がここまで言うとは思わんかった。わしにも噂が耳に入るくらいじゃから晴ちゃんの耳にも入っとるだろう。大切にするんだぞ。」

「分かってるよ。俺は晴香しか選ばないから。」


晴香の為にと自己満足で動き、連絡を取らないまま仕事と佐伯との結婚話の処理に追われているうちに晴香が一大決心をした事を知らなかった・・・。
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