俺様専務に目をつけられました。
文句を言いながらでも圭吾は部屋に戻ると総務に連絡を入れてくれた。

「お疲れ様です、秘書課の高杉です。三栗さんお願いします。・・・・・・・・・・・・・・・はっ?」

圭吾は驚いた顔のまま止まっていた。

「わかりました。・・・いえ、結構です。少し尋ねたい事があっただけですので。では失礼します。」

受話器を置き俺の方へ顔を向けた圭吾、『お前、三栗さんと連絡とって無いのか?』と怖い形相で尋ねてきた。

「いや、最近は・・・。」

「いつからだ。」

「・・・・お前の家に行ってから。」

「ずっと?」

頷く俺を見て盛大にため息をはくと『お前、あほか!へたれか!』と怒鳴られた。

「三栗さん、昨日から体調不良で休みだと。しかもいつまで休むか今はまだわからんらしい。」

「はっ?体調不良?」

急ぎ晴香のスマホを鳴らすが出ない・・・。
体が辛く寝ているのかと思いメッセージを送るが、夕方になっても既読がつく事はなかった。



仕事はある程度まで終わらせ、後は圭吾に任せ晴香の家に様子を見に行く事にした。
晴香の家に着いたのは九時前。

ピンポーン。インターホンを鳴らすと出てきたのは父親だった。

「夜分にすみません。」

「ああ、東郷さんですか。」

父親が呼んだ呼び方に言葉を失った。

「何か?」

「あの、晴香が体調を崩し休んでいると聞いたので様子を見に来たのですが。」

「そうですか。大丈夫ですよ。」

父親から返される言葉はどれも冷たかった。

「遅い時間なのはわかってますが、少しでも顔を見て帰りたいのですが。」

「申し訳ないが帰ってもらえますか。もういいでしょう。」

そう言い玄関は閉ざされた。『もういいでしょう』ってどう言う事だ?
その後も晴香に電話やメッセージを送り続けたが何の反応もなかった。



「お前、一日でやつれたな。」

「晴香に会えなかった。玄関先で追い返された。スマホに連絡を入れてはいるが何の反応もない。」

「はっ?」

昨日の父親の態度の変化を話すとまた大きなため息を付かれた。

「ごめんって言われて朝起きたらお前はいないわ、連絡も来なくなったわ、そりゃ俺が三栗さんだったとしたら終わったと思うな。お前、自業自得だ。諦めろ。」

その通り過ぎて何も言い返せない。

「全部終わらせて、プロポーズするつもりだったんだよ。」

「でも、それはお前の一人よがりだろ。その結果が今だ。でっ?諦めて社長と佐伯の思惑どおり結婚するか?」

「するか!会わせてもらえるまで通う。」

圭吾に迷惑をかけるが今を逃せば本当に晴香は俺の前から消えてしまうと思った。
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