俺様専務に目をつけられました。
パーティーは十六時から始まる。
午前中、実家を訪れ親父たちの前で俺の決意を伝えた。

「親父、まだ佐伯との婚約を今日発表するつもりか?」

「当り前だ。あちらにもそう伝えてある。」

「わかった。じゃあ俺は東郷を辞めさせてもらう。」

「なっ!」





パーティーが始まる一時間前、会場で今日の進行や受付の最終チェックを高杉と共にしていた。

「享祐さん。」

名前を呼ばれ振り向くと、そこにはパーティードレスを着た佐伯が嬉しそうに笑顔を浮かべ立っていた。『享祐さん?』そう呼ぶ佐伯に腹が立ったがグッとこらえた。
周りにいる秘書課をはじめとする社員達もざわついている。

「佐伯、お前は仕事もせず何をしている?」

「パーティーに出る準備をしてました。」

今日発表される俺との婚約を想像して、頭の中は花畑か?と言わんばかりの笑顔、俺の冷たい表情も目に入ってないようだ。

「お前は受付担当じゃなかったか?なぜそんなドレスを着てるんだ?受付にふさわしい服装に着替えてこい。」

彼女は着替えてこいと言われた事にすぐさま反論してきた。

「今日は婚約発表があるんです。だから受付はしませんしドレスも着替えません。」

「たかが秘書の婚約発表を社の記念パーティーでするのか?」

周りのざわめきが大きくなった。

「まあいい。社員としてこの場にいるんではないんだな?高杉、お客様が早くに来すぎたらしいラウンジに案内してお待ち頂け。」

「はい。では佐伯様、まだパーティーまでお時間がありますのでラウンジでお待ち頂けますでしょうか。」

「えっ、ちょっ、享祐さん?」

佐伯は圭吾に引きずられるように連れて行かれた。

「専務、よろしいのですか?」

「何がだ?」

俺の激昂が伝わったのか周りにいた者はそれ以上何も言わなかった。
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