俺様専務に目をつけられました。
強く抱きしめていた腕が離れ向かい合うように座り直した専務。

「晴香、こんな俺だけどずっと一緒にいて欲しい。俺と結婚して下さい。」

目の前に出された専務の手には、返して欲しいと預けた専務の家のカギとピアスが入った封筒、そして小さな赤い宝石箱がのせられていた。

うそ、これ指輪?

「晴香?」

何も答えず、ただ手にのせられた物たちを見つめるだけの私を見て、不安そうに名前を呼ぶ専務。

「享くん、私・・・、享くんに黙ってることがある。」

一瞬だけ専務が目を見開いた。

「あのね、・・・ここ、・・・ここに赤ちゃんがいるの。」

固まった専務の目線だけが私のお腹に移動する。

「マ・ジ・デ?」

専務の反応がどっちの反応なのかわからなくて、ただ頷くことしかできない。



「マジか!俺の子だよな!いや、俺の子しかありえねえんだけど。・・・晴香!」



「くっ、苦しい。」


苦しいぐらいに抱きしめられ、見上げた専務の顔は歓喜に満ちていた。

「ごめん。大丈夫か?」

「はい。」

「体調不良って、悪阻か?」

「いえ、悪阻はそれほど酷くなくて貧血が酷かったんです。休む前の週に瑠奈と食事に行った時、倒れて救急車で運ばれるくらい。」

「そっか。精神的にも不安にさせたから余計に酷くなったんだよな。情けないな俺。・・・でも、これからはちゃんと二人を守ると約束する。」




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