俺様専務に目をつけられました。
『お願い致します。』と返事をすると私の手を取り左の薬指に指輪をはめてくれた。

「良かった。ピッタリだ。」

ドーンとダイヤが乗った指輪ではなく、普段からでもつけていても大丈夫なデザインの可愛らしい指輪だった。私の好みを考えて買ってくれたのだろうと思うと、また一筋涙が流れた。

「享くん、ありがと。」

「俺の方こそ、もう一度戻ってきてくれてありがとう。しかも愛しい子がもう一人増えるプレゼント付きで。」

その言葉を聞き、初めて病院で妊娠を知った時に赤ちゃんを諦める選択をしなくて良かったと思った。もし一人で勝手に決めて諦めていたら・・・、たぶん私は専務の元に戻る事は無かっただろう。





甘い雰囲気も蹴散らすかのように私のお腹がグーッっと鳴った。

「もう昼か。お父さんたちも心配してるだろうから帰るか。」

私の手を握り歩き出す専務。色気が無くってごめんね・・・。




家に戻ると両親もおじいちゃんも笑顔で迎え入れてくれた。専務は結婚よりも先に子供が出来てしまった事を両親に謝罪し、でも本当に嬉しいと今の気持ちを隠さず伝えてくれた。

「享祐くん、晴香のことよろしく頼みます。」

父の言葉に『はい!』と大きな声で答えてくれた専務。
みんなの顔に笑顔が戻った。
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