夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
……けれど。
僕がそう願うのは、僕の心が綺麗だからなんかじゃないんだ。
ガッシャーンッ……!!
ワインを口にして、ゴクッと喉を鳴らした直後。
苦いような渋いような香りと味なんて一瞬で忘れる程の激痛に襲われて、僕は口と胸を自分の手で押さえてた。
手から離れたグラスが音を立てて割れて、残ったワインが飛び散った床に膝を着いて必死に息を吸おうとする。でも……。
ッーー!?
息が、っ……出来ないッーー!!
胸も、喉も、焼けるように痛くて締め付けられる。
声も、出せない。
吐き戻したい。でも、苦しくて出来ない。
グラリと空間が回る感覚がした瞬間。
そんな僕を誰かが抱きとめて、声を掛けてくれた。でも、何にも聞こえない。
ただ、ボヤける視界に映ったのは、長い……黒髪?
『……私は、……の綺麗な心が好き!』
意識が失くなる寸前に浮かんだ声を聞いて、思った。
恨みとか憎しみがない、明るい未来をーー。
違うよ、僕が綺麗なんじゃない。
僕がそう思えたのは、君がいたからなんだ。
……
…………。