夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
「貴女は、好きな男性の為にどれだけ長い刻を頑張ったの?
来世では、巡り逢う事が出来ましたか?」
ぬいぐるみを抱き締めたままベッドに座り、その傍らに置いた『月姫の祈り』の表紙を見つめる。
絵本から舞台化された際、その作品には自分の名前と同じ"明里"という曲が使われていた。
今世では結ばれなかった悲しい結末に関わらず、その曲は優しくてまるで包まれるような暖かさのあるもので……。舞台をヴァロンと観に行った時は「きっと来世では幸せになれるよね?」って、ボロボロ泣きながら言ったなぁ。
「結末を教えて下さいよ、ノイエルさん」
ノイエルーー。
それは、『月姫の祈り』の作者さん。
残念ながら、この人がこの世に出した作品はこの一作だけ。
何故なのか分からないが、続編も、他の作品もない。
だからこそ、唯一の作品だからこそ、愛され、人の心に残るのかも知れないが……。
「月明かりがなくて、手探りで暗闇を歩くのは大変なんですからね……」
そう呟くと、自然と一筋の涙が頬をつたり落ちた。
その時。
コンコンッと部屋の扉をノックされ、条件反射で「はい」と返事をすると、「失礼します」と言う声の後にスズカが部屋に入ってきた。