夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
不思議ね。
以前の私ならば、きっと目立たないように平凡に、と望んで、こんな事を……。自分の主人のご婚約者に、別の恋の手伝いをするようなこんな事は出来なかったのに……。
でも、それ程までに……。それ程までに私は、マオ様とアカリ様のおかげで強くなれたのだ。
アカリ様が泣かないように、悲しまれないように、大好きな笑顔でいて下さるように力になりたい。
そう願う私に、アカリ様はすがり付くように手を握り締めて言った。
「っ……どうしたら、いいの?」
「アカリ様?」
「彼が迷わないように、っ……生きてほしくてこの人生を選んだのに、ッ……。それなのにっ……!」
アカリ様は涙で言葉を詰まらせながらも、ご自分の過去、マオ様との事、そしてここへ嫁いでくる事を決めた理由を話して下さった。
私は知ってしまった。
今まで聞いたどんな物語よりも悲しいお二人の恋のお話を……。
そして、願わずにはいられなかった。
この恋の結末が、どうか明るいものになるように……と。