夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
兄上が倒れ病院へ運ばれた、と連絡を受けて駆け付けた病室前の廊下。私は兄上の専属執事ディアスからの話を聞いて、思わず聞き返した。
「……では、兄上が口にした飲料からは、何も毒物が検出されなかったのだな?」
「はい。ワインを試飲し、その直後の出来事でしたので何か含まれていたのではないか?と、疑ったのですが……。特に何も。
医師は急性心不全ではないか、と……」
「……ディアス。それはちゃんとボトルの物ではなく、"兄上が飲んだグラスのワイン"を調べたのか?」
質問の返しに納得のいかない私が意味深にそう深く追求すると、意味を理解したディアスがチラッと辺りを確認した後、間近まで近付き声を潜めて答える。
「割れたグラスに僅かに残っていたワインを回収される前に口にしてみましたが、私にはなんの効果も表れませんでした」
「!……そうか」
さすがはディアス。
事件現場で冷静な判断と対処を怠る事もなく、私が聞きたかった事を正確かつ的確に答えてくれた。
そして、そのおかげで私にはこれが間違いなく兄上の命を狙った事件であり、犯人も特定する事が出来た。