夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
***

幸い、今回兄上は一命を取り止めたが、それは酒が苦手な兄上が少量しか口にしなかったからなのか、シャルマ様が今回は"警告"の為に毒の量を調整したからなのかは分からない。
"言う事を聞かなければ、次は本当に殺す"
これは、そう言う事なのだろうか……?

私は、どうすればいいのか分からなかった。
しかし。病室に入り、傍に寄り、兄上がちゃんと呼吸しているのが分かると、心の底から安堵している自分がいた。


「っ、……オレはまた、黙って見ているのか?」

父リオンの時も"まさか"と思いながら見過ごして、真実を知りながらその後もずっとシャルマ様に従ってきた。直接手を下していないとはいえ、それは共犯同然だった。

そんな事を思ったら、ここに来る前に見たアカリ様の表情が浮かぶ。電話の応対をする私を見つめながら、必死に言葉を飲み込んでいた。
『ヴァロンに何があったのッ……?!』
心の中でそう叫んで、顔を真っ青にして、涙目で、震えていた。
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