夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
***
「愛しい者が出来て、その愛しい者も自分の事を愛してくれるというのは……ものすごい事なのだな」
数日前。
マオ様の留守中にわたくしの元を訪れたアラン様が言った。
「昔、オレは自分の母を愛してくれない父を許せなかった。
ずっとずっと、"何故なんだ?"って思っていた」
「……」
「今でも勿論、オレは母の味方だ。
……だが、今なら分かるんだ。父が自宅で、どれだけ頑張って微笑っていたのか」
「っ……、何がいいたいのっ?」
「……別に。オレがそう、思っただけだ」
客室にテーブルを挟んで、向かい合わせ座っていたわたくし達。俯いていた顔を上げて、驚いた。
わたくしの質問に答えて微笑むアラン様は、以前の彼とは全く違っていて……。とても優しい雰囲気を纏っていたからだ。
その姿が何故だかものすごく眩しく見えて、上手く直視できなかったわたくしが再び目を伏せると、アラン様は言葉を続ける。
「オレは今なら、ただ駄々を捏ねて腹を立てるだけじゃなくて……。きっと、母が生きてくれるようにアドバイスして、父も心から微笑ってくれる人生を願う」
「……」
「オレは、そんな風に思えるようにしてくれた大切な女性を、もう泣かせたくない。
オレは母がなれなかった姿になり、父が求めた未来に彼女を送り出す……」
そう告げるアラン様に、胸がズキンッ、と痛んだ。
愛する人の幸せを心から願える存在なり、愛する人が愛する人の元で、心から微笑む事が出来る未来へ……。
それはかつて、わたくしもなりたいと思い描いていた姿だった。
初めてわたくしに、恋を教えてくれたリオン様。
いつも、何処か寂しそうな悲しそうな笑顔を浮かべていた彼を見て、わたくしもそう思っていた。
……なのに。
なのに、っ……わたくしはいつから、自分だけの幸せを願うようになってしまったの?
「愛しい者が出来て、その愛しい者も自分の事を愛してくれるというのは……ものすごい事なのだな」
数日前。
マオ様の留守中にわたくしの元を訪れたアラン様が言った。
「昔、オレは自分の母を愛してくれない父を許せなかった。
ずっとずっと、"何故なんだ?"って思っていた」
「……」
「今でも勿論、オレは母の味方だ。
……だが、今なら分かるんだ。父が自宅で、どれだけ頑張って微笑っていたのか」
「っ……、何がいいたいのっ?」
「……別に。オレがそう、思っただけだ」
客室にテーブルを挟んで、向かい合わせ座っていたわたくし達。俯いていた顔を上げて、驚いた。
わたくしの質問に答えて微笑むアラン様は、以前の彼とは全く違っていて……。とても優しい雰囲気を纏っていたからだ。
その姿が何故だかものすごく眩しく見えて、上手く直視できなかったわたくしが再び目を伏せると、アラン様は言葉を続ける。
「オレは今なら、ただ駄々を捏ねて腹を立てるだけじゃなくて……。きっと、母が生きてくれるようにアドバイスして、父も心から微笑ってくれる人生を願う」
「……」
「オレは、そんな風に思えるようにしてくれた大切な女性を、もう泣かせたくない。
オレは母がなれなかった姿になり、父が求めた未来に彼女を送り出す……」
そう告げるアラン様に、胸がズキンッ、と痛んだ。
愛する人の幸せを心から願える存在なり、愛する人が愛する人の元で、心から微笑む事が出来る未来へ……。
それはかつて、わたくしもなりたいと思い描いていた姿だった。
初めてわたくしに、恋を教えてくれたリオン様。
いつも、何処か寂しそうな悲しそうな笑顔を浮かべていた彼を見て、わたくしもそう思っていた。
……なのに。
なのに、っ……わたくしはいつから、自分だけの幸せを願うようになってしまったの?