夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
「ずっと、この本を探してたんだ。
俺と同じ名前の主人公が、度重なる試練を乗り越えて、未来を歩んで行く話。
俺が小さい頃父さんから貰った時は、まだ途中で……。でも、ディアスが父さんから預かってたみたいでさ。やっと、続きが読めたんだ」
「へぇ〜……。
……!っ……、ねぇ!これって……」
ヴァロンの話にすっかり感動したわたくしが表紙を眺めていると、表紙の右下に書かれていた"ある文字"に気付く。
そこに、書かれていたのは「noiL」。本を書いた著者名が記載されている場所に、その名前があった。
驚いた表情のまま視線を移すわたくしに、ヴァロンは"気付いた?"って言いたげにニッと微笑む。
「……そう。それは、父さんが執筆していた時のペンネーム。本名のLionを逆にして、noiL。
絵本から舞台になったあの名作『月姫の祈り』の作者だ」
それは、これまでずっと謎に包まれていた"あれだけ大人気だったのに、何故noiLの作品は他にないのか?"という疑問の答えだった。