夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

スズカは私の身代わりになって、ここから逃げ出せるように……。ヴァロンの元に行かせようとしてくれていた。

「っ……ダメ、ッ……そんな事をしたら、スズカがっ……!」

彼女の想いに触れて、そこでようやく私は今から自分がしようとしている事の重大さに気付いた。

結婚式の当日に、花嫁が逃亡ーー?

そんな事、絶対に許される事ではなかった。
私が消えてしまったら、それに加担したスズカはどうなるの?
孫娘が結婚式を打ち壊したら、お祖父様は?

次々と思い浮かんでくる、みんなへの想い。
そして、何より……。

『兄上とアルバート様の事を想うなら、オレを利用すればいい。
……安心しろ。必ず守ってやるさ』

去年のクリスマスイブ。失恋した私にそう言ってくれた。
いつも口が悪くて、意地悪で……。でも、気付いたらいつも私の為に動いてくれていた。
アラン様。
彼を、こんな形で裏切ってしまって許される訳がない。

「っ……行け、ないよッ。行ける訳、っ……ない」

たくさん支えてもらいながら、私はまだ何も彼に返せていない。
いつも口うるさくして、怒って……。彼の優しさに、想いに気付いていながら、私は……。
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