夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
『天使の血を持つ者は、真に愛した者とは決して結ばれないーー』
何故、我々の一族で希血を受け継ぐ者がそんな運命になったのか。
それが"天使の血"と呼ばれるのか。なんぞ、今や誰も真実は知らない。
私とて、子供の時はそんな運命も、血も、ただのお伽話だと信じてはいなかった。
私の母は父をとても愛していたし、父は真面目で仕事に励み、休みの日は家族で出掛けたり、私に勉強を教えてくれたり。政略結婚とは聞いていたが、私達の家族は上手くいっているように見えたから……。
ーーだが。
それは本当に"上手くいっているように見えていた"だけだった。
私が11歳の時、父に愛人と隠し子が居た事が発覚する。しかも、その隠し子は私と年が二つしか変わらず、もう随分と前から父は母と私の目を欺き、裏切っていたのだ。
更に許し難かった事は、父がその愛人と隠し子の娘を本邸へ招き入れようと考えていた事。