夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

『嫌よ!何故、愛人達(そんな女達)と一緒に暮らさなければいけないの?!』

『頼む!分かってくれ!!』

浮気が発覚したその日から、あんなに仲が良く見えていた両親は毎日のように言い争うようになった。
聞けば、愛人は元々身体があまり丈夫ではないらしく、医師から余命が僅かだと宣告を受けたらしい。
そこで父は最期は一緒に暮らしたいと。そして、間も無く母を亡くしてしまう娘を、正式に自分の家族として迎え入れたいと考えていたのだ。

母は、泣いて"絶対に嫌だ"と訴え続けた。
けれど父は、母の願いよりも……愛人とその娘を選んだ。


愛人は、艶やかな漆黒の髪とまるで黒水晶のように透き通った瞳を持つ麗しい女性。
そして娘は、母親の容姿をそのままそっくり受け継いだ"希血の少女"だった。

ーーー希血(天使の血)を持つ者は、漆黒の容姿を受け継がない。
その法則が破られた時、その者は更なる能力(ちから)を発揮するであろうーーー

お伽話だと、思ってはいた。
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