夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
だが。私は初めてその少女に会った瞬間から胸がザワつき、常に嫌な得体の知れないものに付き纏われているような感覚に陥っていた。
それは、予兆。
そして、その悪い予感は的中していく。
一緒に暮らして僅かひと月程で、愛人はあっけなく逝った。
その際の、父の落胆ぶりといったら、すごかった。
"ああ、きっと私や母が亡くなっても、父親はこんなに悲しむ事はない"。
その悲痛溢れる姿を見て、そう感じずには居られなかった。
私や母がどれだけ声を掛けても、どんなに優しく接しても、父の心には届かず……。そんな父を慰めたのは、愛人の娘ーアンナーだった。
『お父様、私がおります』
たった、一言。
遺体から離れようとしなかった父をアンナはその言葉だけで動かし、優しく抱き締められていた。
父の本当の家族は私と母なのに。それなのに、その光景はまるで逆で……。
とても哀しくて、すごく惨めだった。