夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

それから……。
本邸内や、私達の周りは変わっていく一方だった。

父は今まで以上にアンナに愛情を注ぎ、また本邸内の使用人や父の仕事の関係者達もアンナを可愛がり始める。
アンナには、見る者を惹きつける不思議な能力(ちから)があった。とても10歳とは思えない母譲りの美しい容姿はもちろん、何よりも際立つのは声。
我が一族は歌の才能に恵まれない中、唯一アンナは歌声に優れており、その歌声を聴いたある者は長期に渡って挫折していたが社会復帰を果たし、難しい病を患っていた者は奇跡と呼べる完治を遂げた。
"天使の歌声"。アンナは一躍、そう騒がれた。

そして……。次々と周りの者達を魅了していったアンナは、ついに『次の後継はアンナ様で宜しいのでは?』と本妻の息子であり、長男である私を差し置いて支持されるようになった。


ーー赦せなかった。
突然現れて、私と母から全てを奪っていくアンナが。
長子として、跡取りとして、日々努力してきた私ではなく、優しく頭を撫でアンナを可愛がる父が。

何が"天使の歌声"だ。
私からしたら、周りの人間に毒牙をかける悪い魔女の子供にしか映らなかった。
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