夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
***

「お前はッ……大馬鹿だ!!」

そう言ってアカリ様を抱き締めたあの瞬間。
オレの中には二つの気持ちが葛藤した。

このまま黙って傷心のアカリ様を手に入れるか……。
それとも、オレの知っている"秘密"を話してやるか……。


ここ最近の兄上の様子を見ていて、近々アカリ様に会いに行くのであろうとは思っていた。
そしてミネア嬢との事を伝え、ケジメをつけるのであろうと……。

予感は的中。
兄上はミネア嬢を選ぶと、アカリ様に別れの言葉を告げた。
馬鹿な兄上だ。
二人が言い合いになったら仲裁に入ろうと思って、こっそり兄上をつけて来ていたオレは陰から様子を伺っていた。

……しかし。
オレは衝撃のあまり、二人が話している間に入る事が出来なかった。
何故なら兄上とアカリ様の間には、オレがこれまで見てきた男女の醜い(もつ)れが全くなかったからだ。

言い合い、責め合い、(ののし)り合う……。
オレの知る男女の別れ際とは違う。
思わず魅入ってしまうような、舞台のワンシーンのような別れで……。
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