夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
「そんな事はさせません」
そう言った私に振り返ったシャルマ様の表情を見たら、考えてもいなかった言葉が……口から出たんだ。
何故なら、いつも他人を寄せ付けず、警戒し、威圧の込もった眼光がそこにはなく……。私を見つめるシャルマ様の瞳は、とても悲しそうだった。
これまで私が見てきたこの人と、今目の前に居るこの人は本当に同一人物なのか?と、問いただしたくなる程に……。
「……やはり。お前も私に逆らうか、アラン」
諦めたように呟やかれたその言葉とは対照的に、期待を裏切られたかのように残念そうな表情。
それは私が初めて知った、シャルマ様の表情だった。
掛けられる言葉、接してくる態度。
そこからは今まで全て己の為と感じる事ばかりで、私の事を想ってくれているとは微塵も感じなかった。
……けど、……。
『私の元へ来い。
この世界で生き抜く術を教えてやる』
母が亡くなった時、手を差し伸べてくれたのはシャルマ様だった。