夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
母を失った悲しみ、孤独。
父に裏切られて許せない気持ちと、でも、まだ愛して欲しいという期待。
兄に対する、嫉妬や怒り……。
やるせない想いの先をどうしたらいいのか分からなかった幼いオレを、どんな形であれ導き、育ててくれた。
シャルマ様は多くを他人に語る事はしない。
けど、もしかしたら……。自らの孤独を知った上で、例え愛ではなく同情だとしても、オレの事を少しは大切に想っていてくれたのだろうか?
必要として、くれていたのだろうか?
……それならば。
オレはシャルマ様を、独りには出来ないと思ってしまった。
ーーおかしいな。
以前のオレならば、きっとこんな風に思う事はなかった。
シャルマ様の中に隠された孤独にも気付かず、知ったところで"それがなんだ?"と思っただろう。
だが……。
『夢だったんだよな。
こうやって、弟と一緒に遊ぶの』
『俺は、お前が居てくれて嬉しいよ』
『親は親だろ?俺達は俺達だ。
俺は父さんに感謝してるよ。俺に、兄弟を遺してくれた事』
あの瞬間。
産まれてきて良かった、と……心から思えたから。