夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

『か〜わいい!シオンはディアスにそっくりだね〜!』

産まれた時期に咲いていた花ー紫苑(しおん)ーを由来に、そう名付けた。

シオンの灰色の髪や瞳を見れば、父親が誰なのか一目瞭然だっただろうに……。
けれどリオン様はその事には決して触れず、シオンの事を一緒に可愛がって下さった。

家族ごっこ。
おままごと。
そう思われるかも知れないが、シオンが産まれてからの約三ヶ月はまるでリオン様とも家族のようになって過ごせた、私の人生で1番幸せな時間だった。


……しかし。
護る為には、ずっと傍に置いておく事など出来なかった。
おまけに執事の職務、リオン様の願いで夢の配達人となった私はなかなか会いに行ってやる事も出来ず、寂しい思いをさせたに違いない。
それでも優しい院長先生の元、いつからか「とうさん」と私を呼び、慕ってくれた。真っ直ぐ優しい子に、育ってくれた。

リオン様が亡くなられて、共に護ってくれる人が居なくなってからは、"いつ、シャルマ様にシオンの存在を悟られてしまうか分からない"と、いつも心の何処かで怯えていた。

けれど。spellbind(スペルバインド)から解放され、シャルマ様の手から逃れる事が出来るのならば、シオン(我が子)と一緒に新しい人生(みち)を見付けられるかも知れない。女性(本当の自分)に戻り、母としてあの子の傍に……。
そう思って、希望を抱いて、アンナ様のお願いに手を貸す事を決めた。

……それなのに、……
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