夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

「彼は自分の事よりも、いつも他の人の為に生きるの。その為に何かを隠してる……なんて、そんな事はどうでもいいんだ。
……大事なのは、その先のパートナーに私は選ばれなかった、って事」

「……」

「彼はミネアさんを選んだの。
私にハッキリ、ミネアさんと結婚して良い夫であり、子供の良い父親になる、って言ったの。
……それが現実で、真実」

「っ……」

目の前で兄上に貰った『月姫の祈り』の絵本を、大事そうに胸に抱くアカリ様。
こんな時なのに、他にもっとすべき事や思う事があってもいい筈なのに……。そんな彼女を、オレは心の底から美しいと思ってしまった。

「彼がこの世界で生きると決めたのなら、私も生きる。
私は私にしか出来ない事を見付けて、同じ世界で生きるの」


護りたい、と思った。
今まで以上に、真剣に。
例え彼女の心が兄上の元に在っても……。これ以上彼女が傷付かないように、護ってやりたいと思ったんだ。

……
…………。
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