夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
それはどうしようもない葛藤だった。
母の無念を叶えてやりたかった。
その為に、自分の人生を捧げて来た。
それがオレの生きる理由であり、オレの存在価値だった。
その筈だったのに……。
『親は親だろ?俺達は俺達だ。
俺は父さんに感謝してるよ。俺に、兄弟を遺してくれた事』
兄上に出会い、一緒の時間を過ごす中で触れ合った心がオレを変えた。
『俺は、お前が居てくれて嬉しいよ』
オレも、兄上が居て嬉しいよ。
ーーでも。そしたら、母さんは?
母さんにはオレしかいない。
オレが味方でなくなったら、母さんは独りぼっちだ。
それなのにオレは、…………。
「っ、う……ごめ、……母、さん!ッ……ごめん、なさいっ」
泣きながら呼んだら、閉じた瞳の中の暗闇に母の背中が見えた気がした。
失ったあの日から会いたくて会いたくて、もう一度抱き締めてほしかった。
手を伸ばしたいーー。
けど、母の顔を見るのが……。今のオレを見て、なんと言われるのかが怖くて動けない。
ごめんなさい、ごめんなさい……。
そう繰り返しながら子供のように泣いて、項垂れて、涙がポタポタと床を濡らした。