夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
「リオは、その名前を貴方に授けたのね。
……ならば私にとっても、貴方は大切な息子だわ」
そう言ってアンナが、憎き恋敵の息子であろうオレをもう一度抱き締めてくれた瞬間に分かった。
父が何故この女性に惹かれたのか……。
母程の女性でも、敵わなかったのか……。
美しすぎる透明な心。
ドロドロと汚れた感情が溜まった人々の中で生きる者にとって、まるでオアシスのような存在。
いや、まるで天使のような……。次元の違う、存在のような気がした。
そして、今のオレは知っている。
誰かを愛おしく想う気持ちは他人にも、本人にも制御不可能。好きになろうとするのではなく、いつの間にか自分の中で特別な存在となっているのだ。
オレが、兄上の妻であるアカリ様を愛してしまったように……。
「私達の問題を、貴方やヴァロンに背負わせてしまってごめんなさい」
アンナの言葉にオレは首を横に振った。
本当はとっくに分かっていたんだ。ただ、受け止められず、認められず、子供の頃からの想いに卒業出来ずにいた。