夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
母の為と建前をつけて、母を失った悲しみから立ち直れない弱い自分を奮い立たせてきた。
でも。もう、大丈夫だ。
オレが微笑んでいれば、心の中の母さんも目の前の誰かも、必ず微笑み返してくれるのだと分かったから……。
冷静さを取り戻したオレが微笑むと、アンナも微笑ってくれた。
そして、ようやく長き蟠りが解けて、オレは兄上と本当の兄弟であり、家族になれた気がした。
ーーけれど。
アンナにとっての戦いは、まだ終わっていなかった。
この時の笑顔が、オレが覚えている彼女の最後の笑顔となる。
兄上に母親の事を話してやりたかったのに……。
……、……この暫く後。
オレの記憶はプッツリと途絶え、気付いたら病室のベッドに居て、何故そうなってしまったのか全く覚えていなかった。
《結婚式場の控え室が全焼!!》
《焼け跡から男性一人、女性二人の遺体!一人は身元不明?!》
翌日の新聞の見出し。
それを見て夢でも幻でもなかった、と分かりながら、オレはこの事件の事について、永遠に自分の胸に秘めていく事になるのだった。