夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
***

もう三十年以上前になるのよね。
愛おしい夫リオンと、彼との間に産まれた息子ヴァロンと暮らしていたのは……。
そして、別れる事になったのは……、……。


幼い頃の記憶を失くしていた私は、娼婦の館の主人から「お前は金持ちの男が愛人との間に作った子供で、汚らわしいからこの館に売り飛ばされた」と、聞かされて育った。
私を捨てた両親が……。そして、金持ちの奴等が許せなかった。
媚びて、甘えて、上手に嘘を吐いて、奴等から大量の金を貢がせて、今度は私が捨ててやるの。
……そう思って、娼婦としての日々に力を注ぐ事しか私にはなかった。

けれど、そんな毎日に虚しさを感じ始めた頃。

『っ……僕は、こんな事をしに来たんじゃありません!』

『僕は、貴女が好きですっ!
だからっ……もう、こんな仕事辞めて下さい!!』

リオに、出逢った。

初めは、訳が分からなかった。
でも、共に時間を過ごして、彼と一緒に居る日々を重ねるうちに離れたくなくなっていた。
娼婦の館に来て以来、初めて私に"本当に優しくしてくれた"たった一人の男性(ひと)
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