夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
だからヴァロンが産まれた時、怖かった。
私にも、彼にも似ていない髪と瞳の色を持つヴァロンを見る度に"私はリオに捨てられてしまうんじゃないか?"って、ずっと怯えていた。
その弱い心から、私は必要以上にヴァロンに厳くしてしまった。
ヴァロンが逆らわない事を……。私が怒っても、決まってあの子が「ごめんなさい」って微笑んでくれるのを良い事に、甘えていたの。本当に、ダメな母親。
ヴァロンが6歳の誕生日の夜。
きっとあの日が、私があの子に1番優しくしてやれた日だった。
リオが一日中家に居てくれて、私のお腹には新しい命が居て、精神的に安定していた私がヴァロンに怒鳴る事は一度もなかった。
『ねぇ!おとうとがうまれたら、アランってなまえにしよ〜!』
誕生日パーティーの用意をしている最中、ヴァロンがそう提案した。「まだ男の子か女の子か分からないよ?」って言うリオに、絶対に弟だってあの子は言い切った。
アランーー。
その名前の響きに心地良さを感じて、私がお腹を撫でながら「良い名前ね」って呟いたら……。
『!っーー……ほんとう?!』
ヴァロンは声を弾ませて、その後ボロボロ泣いて、涙を拭いながら嬉しそうに微笑った。