夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

胸にトクンッと、暖かい鼓動が走った。
変ね。あの子の笑顔なんて、見慣れていると思っていたのに……。いつもと違う、笑顔だと感じた。

ーーああ、そうか。
私が「良い名前ね」って、言ったからだ。
「違う」「そうじゃない」「やり直し」……。私はこれまで、ヴァロンに否定の言葉しか掛けて来なかったのだ。

そう初めて実感して、これからは少しずつ変わっていこうと思い始めた。
けれど、その矢先……、……。


『ようやく見付けたぞ、リオン。
お遊びの時間はもう終わりだ。
これからは私の跡取りとして生きてもらう』

私達家族の時間は、あっさりと終わりを告げた。

更に、衝撃の事実が私を追い詰める。
それは引き離されてから一度だけ、リオが私達の家に帰って来た夜の事。

二人きりの寝室。
これまでの娼婦生活でたくさんの男達を落として来た技術や経験なんて、全く役に立たなかった。なんとか繋ぎ止めたくて、また元通りの生活をしたくて「好き」「愛してる」「一緒にいて」「捨てないで」……。そんなありきたりな言葉で、泣いて、すがり付く事しか出来なかった。
< 205 / 338 >

この作品をシェア

pagetop