夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
……
……それから、更に月日が流れて。
良かった事、三つ目。
それは突然の事だった。
「すみません!占ってもらえますかっ?」
とある有名な神社がある観光地。その片隅に小さなテーブルと椅子を用意して占い業をしていた時の事。とても必死な声で一人の女性が話し掛けてきた。
ふと顔をあげて見ると、紫に近い薄いピンク色の和服に身を包んだ黒髪に黒い瞳の……。まだ、少女のようなあどけなさを残す可愛らしい女性が立っていた。
何か余程不安な事があるのだろうか?
心配そう、というか今にも泣き出してしまうのではないか?と思わせるその表情を見て、私は安心させるように答えた。
「ええ、大丈夫よ」
すると、私の返答にホッとした女性が少し離れた場所に居た連れに手招きしながらその名を呼ぶ。
「ヴァロン!占ってくれるって〜!」
ーーーえっ、?!
その名前を聞いた瞬間。呼吸と心臓が、一瞬止まった。
普段から服に着いていたフードを深く被っていたし、口元を薄い布で隠していていたから良かった。
けれど、女性に促されて「はいはい」って苦笑いしながら正面の椅子に座る男性を見て、動揺は隠せなかった。