夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
ヴァロンッ……!!
心の声が、口から出なかった事はまさに奇跡……。いや、並の驚きをきっと通り越していたのだろう。
黒髪に黒い瞳の容姿に変装しているけど、見間違える筈がない。目の前に居るのは、離れてから一度だって忘れた事のない私の息子だった。
っ……大きく、なったのね?
椅子に座っていても分かる。
別れた時は私が屈んであげないと目線が合わなかったのに、すっかりリオよりも大きくなって、今では私が見上げないといけないだろう。
成長した姿に、視野が滲みかける。
でも、そんな私を冷静にしたのはヴァロンの瞳。
なんて優しい瞳で、その子を見つめるのかしら……。
私の方になど見向きもしないで、ヴァロンは隣に座る女性をじっと見つめていた。
一目で、大切な女性なのだと……。愛おしく想っているのだと感じる。
幸せ、なのよね?
そう心の中で問い掛けながら、少し落ち着いた私が「何について占いましょう?」と尋ねると、女性が顔を真っ赤にしながら「わ、私と彼の相性を……」と言った。
その姿を見て、抑えきれない愛おしさに「ククッ」って微笑みを溢すヴァロンの姿に、また胸を締め付けられながらも……私は占いを始めた。