夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
ヴァロンの中に宿っている一族の能力は私やリオ達と少し違う。
ハッキリと過去や未来を見透せる訳でもなければ、使おうとしてその能力を使っているのではない。ただ、なんとなく自分がこれから直面する出来事を察しているのだ。
それはつまり、簡単に言えば勘が物凄く良いという事。事前に察する事でいかにその出来事を上手く乗り越えるか?という術を見付け、物事を対処する為の時間を得る"有余"の能力だ。
ヴァロンが夢の配達人として優れていたのも、仕事の成功率が高かったのも、この有余の能力が自然と発動していたからだろう。
勿論、事前に察しているからと言って物事全てが上手くいく訳はない。限られた時間の中で対処や対策を考える頭の回転の速さ、またそれを実現させる為の決断力や技術、身体能力……。予測は出来てもそれを回避したり解決出来たのは、ヴァロン自身が生み出した努力の賜物だ。
有余の能力を持ったヴァロン。
一見表面上を見れば鬼に金棒、無敵にも思えるこの能力。
けど、事前に考える時間が出来るという事は良い事ばかりではない。