夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
……そうね。
知らずに済むのなら、きっとそれが1番いいわ。
この時ばかりは、兄に感謝した。
私達の血の事で、どうかもうヴァロンやアラン、そしてその血を受け継いでいく子供達が苦しまないようにと願わずにはいられなかった。
「……ごめんなさい」
「!っ……頬の、傷がッ……」
私が顔を上げた瞬間。先程銃弾で傷付いた筈の頬の傷が消えている事に気付いたアランが驚き、一瞬の隙が出来る。
人並み外れた自己治癒能力。
これも私の中にいつの間にか目覚めていた能力。擦り傷ならば数分もあれば再生し、跡も残らない。
……私は恐ろしいの。この先、私は一体どれ程変わってしまい、"人ではいられなくなる"のか。
いつか誰とも関わる事も出来なくなり、その孤独に耐え切れず壊れてしまうのではないか。
そして、いつかこの能力に目を付け欲する者が現れてしまわないか、と……。
だから、全ての元凶を……この世から消す。
どうかこの天使の血が、この未来"悪魔の血"に変わる事がありませんようにーー……。
想いを込めて、怯んだアランの後頭部に手を回し引き寄せると……私はそっと唇と唇を重ねた。