夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
「……来て、くれたんですね」
「当然だろう?オレは、兄上と貴女の弟なんだから」
その言葉に、また視野が滲む。
彼にもたくさん迷惑を掛けて、たくさん助けて貰ったのに……。頼るだけ頼って、ヴァロンが戻ってきたら別れを告げて……。
酷い女だと思われても、顔も見たくないと言われて当然なのに、相変わらずの優しい瞳で私を見てくれた。
「綺麗だな」
「っ……」
「やはり、寸胴には和服がよく似合う」
「!っな……、何よそれ!酷いっ!」
「クッ、ハハハッ……!」
溢れそうだった涙が、アラン様の優しい意地悪に引っ込む。
本当に本当に、優しい男性。
私がこんな事を願える立場ではないけど、彼には絶対に幸せになってほしいと心から思った。
「……それで?兄上は花嫁をほったらかして何処に居るんだ?」
「あ。それが、なんか色々準備があるとか言って……。だから、先に支度が出来たならみんなと写真撮ったりしてていいって」
部屋を見渡しながら尋ねるアラン様に、私は微笑みながら答える。
そうなんだよね。ヴァロンとは互いに晴れ着姿になる前に別れたっきり。口でそうは言っても、何だかんだ支度が整ったら1番に私の元に来てくれるんだと思っていたから、実は少しガッカリしていた。