夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

ここにはたくさんの想い出がある。
17歳の時、召使いになってくれるバロンと出逢った場所。花嫁修行の最終日に、二人で散歩しながらたくさん話した場所。
記憶を失くした彼と……。マオさんとも、大切な話をした。ここでは本当に、色々な事があった。
……そして。『月姫の祈り』の、舞台になった場所。


「もう一度ここから、やり直したいんだ」

「!……え、っ?」

彼はそう言って私を腕から降ろすと、正面で(ひざまず)きながら左手を取って言った。

「ずっと俺の傍で、微笑っていて下さい」

「っーーー……」

その告白(プロポーズ)を聞いた瞬間。"何故、今この場所に?"と、疑問を抱いていた私の身体にトクンッと大きな鼓動が響いて、波の音が消える。聴覚も、視覚も……私の五感は目の前にいる彼に惹きつけられる。

そして"ある事"を思い出した。
私は、この告白(プロポーズ)を……。
ーーううん。この場面を、知っている。

ヴァロンと18歳に結婚する時に、言われたーー?

……っ、違う。
この告白(プロポーズ)に、この場所(砂浜)
もっともっと、以前(まえ)に……。私は"彼"に言われたんだ。
< 268 / 338 >

この作品をシェア

pagetop