夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
「やっと起きたか」
「!……っ、……え?……アラン、様?」
その表情はまさに鳩が豆鉄砲を食ったよう。
声をかけると、女は朧げにしていた視線をハッとしてオレに向け、驚いたように目を見開いて見つめる。
そんな様子から、オレはこの女も今この状況に"なんて事をしてしまったのだろう"と後悔しているに違いないと思った。
それならば好都合。
互いにひと時の夢を見たと思って、忘れられる。
ホッして今後の対処を口にしようと思った。
けれど、…………。
「ーー可愛い」
「!……は?」
「前髪、下ろしていらっしゃる姿。初めて拝見致しました」
「……」
「あ!申し訳ございませんっ……。男性の方に可愛い、というのは褒め言葉ではございませんよね?
……けれど、私は……とても良いと、思います」
「……」
ーーこの女は、いきなり何を言っているんだ?
目の前で微笑む女に、オレは呆気に取られる。
目を覚ましたと思ったら、オレを見て可愛い、だと?
確かに普段顔を合わせるのは仕事に行く前と帰宅した際だから髪はしっかりとセットして、下ろしている状態は風呂上がりから眠って目を覚ますまでの数時間。
この俺の今の姿を知るものはかなりレアだとは思う。
だが、今っ?!
注目する事はそこではないだろうっ?
前言撤回かも知れない。
この女は想像以上にクセ者かも知れないと、オレは内心焦った。