夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

私は負けたくなかったのだ。
この家の為に、アルバート様の為に1番お役に立てるのは自分で在りたいと思っていたの。


そんな、ライバルのような存在を嫌でも認めなくてはいけなくなったのは、誘拐されたアカリ様をあの男が無事救い出してくれた時。
しかも自分は怪我をしていたと言うのに黙っていて、翌日の早朝に私がお礼を言いに訪れた際気付かなかったら、きっとずっと黙っていたんだわ。
縫う程の怪我で微熱もあったのに「心配されるの苦手だから、誰にも言うなよ?」って口止めされたし。

何だか借りを作ってしまったようで悔しかったから、アカリ様から手作りクッキーを渡すように仕向けたら予想以上に嬉しそうだったっけ。
その、今までは違う男の反応に"嬉しそうな表情も出来るのね"って、ほんの少し変化を感じたのはこの時で……。

でも、そんなものは序の口で、その後に私の男への印象が大きく変わる出来事があった。
それはご自分のお父様の事を知りたいと望んだアカリ様を男が別荘から連れ出して、一週間程無断外泊をした後に戻ってきた時の事だ。
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