夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
「気に入らんな」
オレは女に歩み寄ると、顎を持って自分を見上げさせる。
よく見ると、その瞳は潤んでいて……。気丈な事は言ってはいるが、何かを隠しているように見えた。
「……何かはあるだろう?言え。じゃなきゃ俺の気がすまん」
思い通りにならない女の受け答えが気に入らない。それに面倒な事を避けたかったオレは、女の処女を奪った代わりに何かを求めてもらう方が楽だった。
自分の事しか考えていなかった、酷い男のオレ。
眉間にシワを寄せながら見つめていると、暫くしてようやく女が口を開く。
「……では。一つ、お願いしてもよろしいですか?」
「何だ?」
「このお邸では、私以外をご所望しないで下さい」
「……なに?」
「このお邸内でアラン様の夜のお供をする使用人は、私だけにして下さい……!」
またさっきとは違う強い瞳でオレを真っ直ぐ見つめ返して、女はそう訴えた。
その馬鹿げた要望にオレは再び呆気に取られる。
……だが、少し考えてそれは悪くないと思った。
初心者は鬱陶しいと思っていたが、好き勝手やりたい時は変に経験値のある女より扱いやすい。それに、抱いた後のあの満たされた感覚。身体の相性が良いというのはまさにこの事だろうと思った。