夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
改めて目の当たりにした"完敗"に、焦らず、ゆっくりと自分の失恋の傷と向き合っていこうと思えた。
「……。
で?結局何を悩んでたんだ?」
「別に。何でもないですよ」
「嘘付け。何か心に引っかかってる事、あんだろ?」
兄上がオレを見てニッと微笑う。
すると、表面を覆っていたモヤモヤが消えたからか、自分の中に生まれ始めていた新たな悩みが思い浮かんだ。
それは、今朝あの女に言われた言葉ーー。
「……。"私の欲しい物は……私の手には、入らないもの"」
「ん?」
「……欲しい物を聞いたら、ある女がそう答えたんです。どういう意味だか、分かりますか?」
オレは大体の事の経緯(相手が使用人とか処女とかは省いて)を兄上に話し、女の言葉の意味の正しいの答えを求めた。
すると兄上はポカンとして言う。
「え?お前さ、それって……マジで分かんねぇの?」
「!……兄上、分かるんですか?」
「え、だってそれって……あ〜、いや。それは、俺が教えちゃ駄目なやつだろ」
「は?」
兄上の言葉もオレには意味不明だった。と、言うか益々分からず、モヤモヤとしてくる。
そんな頭の中に浮かぶのは、女の悲しそうな表情。
気に入らない。
オレの前であんな表情するなんて気に入らないーー。
オレはこの問題をさっさと解決したくて、探している答えを知っているかのような兄上に深く追求する事にした。