夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

女は自分の手の中にある香水の瓶を、大事そうに包んで見つめている。

何故だろうーー?

嬉しそうに、愛おしそうにしているその姿を、オレは無性に奪ってやりたくなった。

「気に入らんな」

「えっ?……きゃ、ッ!」

オレは手を掴み引くと、自分の身体に倒れ込んで来た女から香水の瓶を取り上げる。そして、そのまま荒々しく唇を奪ってやった。

香水(こんな物)より、もっと良い気分にさせてやる。
第一、この女は物よりも"オレの女"になりたいと言ったじゃないかーー。

今夜は抱く予定ではなかった。
が。女に輝く美しい瞳で自分を見つめて欲しかったオレは、当初の予定をすっかり忘れて自分自身で喜ばせようとしていた。

……でも。
唇を離して見ると、女は悲しそうな瞳になり、オレとオレが奪った香水の瓶を交互に見つめていた。
その表情を見たら胸がズキッと痛んで、その想いがそのまま口から漏れる。

「っ……、結局……お前も物か」

「!……え?」

「何もいらないとか言って、本当はオレの……、っ……」

言いかけて、オレはグッと想いを飲み込んだ。

……何を、落ち込む必要がある?
今まで人を愛さず、物のように扱って、見下してきた自分。そんな自分が、今更誰かに求められたいなんて馬鹿げた話だ。
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