夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
「……何処にも行かない、と言ったな」
「!……はい」
「コレはやる。だが、お前もその約束を守れ」
香水の瓶を女に差し出しながら、オレは言った。
本当はこの時、答えは見付かっていた。
けど、素直になれないオレはこんな汚い約束でしか、繋ぎ止めようとしなかった。
その自分の心の汚さと弱さに、後に自らが苦しむ事になるとは知らずに……、……。
「ーーはい。守りますっ」
その言葉と、嬉しそうに香水に手を伸ばす女の姿に満足して、"今この時の幸せ"しか見ようとしなかったんだ……、……。
女が香水に触れる直前。
オレはサッと手を動かし、香水をテーブルの上に置くともう片手で女の後頭部を押さえながら口付けてソファーに押し倒した。
「……だが。まずはこっちの約束からだ」
久々に得た安らぎと温もりを、ただただ感じていたかった。
今のままが続けば良いと、オレは思っていたんだ。