夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
自分がこんな風に、妻や子供、家族と微笑っている姿なんて想像が出来なくて……。
しかし、この女はきっと夫や子供、家族と笑顔の絶えない幸せな家庭を築ける人物だと思った。
不幸にも奉公先がここで、恋愛出来るような異性がいなかったから、この女はオレに抱かれるしか人生がなかっただけ……。
こんな自由もないような場所で働いて、ただ主人の欲を満たす為だけの道具に成り下がっている女を思い返して、本当にこれでいいのかという想いが浮かぶ。
その時……。
「ーーアラン、様?」
「!っ……」
呼び掛けられてビクッと我に返った。
写真立てを机に置き声の方に視線を向けると、女が上半身を起こして朧げな瞳でこちらを見ていた。
目を覚ます前に立ち去ろうと思っていたのにーー。
しかし。意識が朦朧としているのか、動揺するオレの視線の先で女の身がグラッと傾き、ベッドから落ちそうになる。
!!……危ないッ!
咄嗟に駆け寄って女の身を抱き止めた。
それは不可抗力、というか、やむ得ず触れたのに……。何故だかとても、悪い事をしている気持ちになる。
まるで純白の天使を、真っ黒な汚い手で触ってしまったかのように……、……。