夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
「俺も、家族ってどんなものなのか、ずっと知らなかったから」
「!……、ぁ……」
「両親に捨てられた、って思い込んでたし……。そんな自分が結婚して、家族を持って、ましてや子供を愛せるのかな?って、ずっと思ってた」
……そうだった。
自分ばかりが両親からの愛を得られず、不幸だと思っていたが……。兄上もまた、過酷な幼少期を過ごしていたのだ。
言われて思い出し、改めて自分の事しか考えていなかった事を腹立たしく、申し訳なく思った。
けれど兄上は少しも怒ったり嫌な顔をせず、教えてくれる。
「でもさ、なんとかなるんだよ。自然と」
「……」
「本当に好きな人と一緒に居ると、一人だった時とは違う景色や未来が見えるようになるんだ。
こんな事したい、あんな事したい。……愛おしくて、大切で、ずっと一緒に居たくて結婚する。共に過ごすうちに、オレはアカリが自分の子供も抱いてる姿を見たくなった」
「……。
一緒に居るうちに……自然と?」
「ああ。だって、そうだろ?自分と相手、二人の未来なんだぜ?
自分一人じゃ、絶対に見えない世界だろ?」
「!!ッーー……」
自分一人では、絶対に見えない世界ーー。
兄上のその言葉が、何よりもオレの心を動かした。